表題の通り、いわゆる「ポピュリズム」と呼ばれる政治のあり方を、政治哲学/思想および政治学の観点から論じようと試みた著作である。
意識調査や統計を用いた実証的な議論は本書の目指すところではなく、あくまで観念的な分野に主眼がおかれている。
「ポピュリズム」を批判的にではなく、両義的に、あるいは民主主義に内在する本質的要素として把握しようとする意図は理解できる。
しかしながら、論旨展開や結論が明快であるとはいえないだろう。
その原因はおそらく以下の部分にあるように思われる。
第一に、「ポピュリズム」の定義が章節に応じて使い分けられており、ある部分では単に「デモクラシー」として、ある場合では「大衆迎合主義」として、あるいは「カリスマ的な政治」として、異なった文脈の中で扱われてしまっている。そして、これらの用法がしばしば混同され、明確に切り分けられていない点にひとつの問題がある。
第二に、そうした用法の混乱は、基本的に本書が、近年の著名な思想家・政治学者らの議論をレジュメのようにまとめ、それらを接続しているパッチワーク形式の著作であることに由来する。社会民主主義の議論から、保守主義者の議論までが並列的に論じられているが、著者の拠って立つ思想的立場も不明なことと相俟って、論旨把握をより困難にしている。
(また個別思想家の要約も若干怪しく、著者が注目したい点のみを切り貼りしている印象がある。例えば、ジョック・ヤングは明らかに社会民主主義者の立場から、新しいアンダークラスの創出を重視する学者だが、本書ではそうした彼の立場は考慮されず、単に社会内の成員をアンダークラスとは関係なく二分割したことを指摘した学者だとする要約が掲載されており、これは不適切であるように思われる。他にもその分野の専門家が読めば首をかしげるような要約が目立つ)
結局のところ、「デモクラシーを考える」という表題のほうが適切であったように思われる。
また批判的見解から距離を取るという名目で、マイノリティ問題や社会内の権力関係にほとんど目配りをしていないため、中立的な立場を取るといいながら、どちらかといえば哲学趣味の官僚かシンクタンクの社員がする議論のように、看板とは裏腹に議論の中立性が損なわれてしまっているようにも感じられた。