他のレビューでも書かれていますが、正直言って、どう好意的に見てもこのインタビュアーの方は「物語を作る」ということがどんなことか分かっているとは思えません。そもそもドキュメントの制作に向いている方とも思えません。
宮崎監督が『ポニョ』という作品に、悩み、苦しみ、喘いでいる姿は見ていて心を打たれます。文字通り監督が作品に囚われ、翻弄されている姿です。ところがそこに「今のシーンにはどんな意味があるんですか?」「なんでああいう演出になったんですか?」というインタビュアーの質問が入ってくるので、その度に創作の世界から連れ戻されてしまいます。それが全編に渡って続きます。「簡単に言葉で言い表せるなら作品を作る意味がない」ということが最後まで理解できないようでした。監督が次第に不機嫌になっていくのは当然だと思います。見てる方も同じような苛立ちを感じますから。
12時間30分という長時間のドキュメントで、ほとんど宮崎監督のみに焦点を絞っていることは、とても面白いと思います。貴重です。にもかかわらず「作品を作る」ということについて深く掘り下げられたようには感じられません。監督の狂気に触れることはなく(見てる方はそこに触れたいのに)、かわりに「どうして宮崎さんはここまで苦労するんだろう?」というインタビュアーの疑問が全体を覆っています。たぶんご本人がそこに一番関心が向いているからでしょう。
「もし別の方がこのドキュメントを作ったなら?」と思わずにはいられません。そういう意味で、あまりにももったいない作品だと思います。