対談集というのは、片方が喋り過ぎてもう片方が相槌しか打たないもの(大方は、同じ分野の同じ立場の力の差がある人を組んでしまったもの)、全く噛み合っていないもの(大方は、分野や立場が異なり過ぎてどうにもならないもの)なども多く、難しいと思うのだが、本書は成功している。偏に、両者が賢いこと、質問者が的確な方向でズケズケと聞いていること(それでも、上野氏は丸くなったと思う)と「研究対象」がまずまず逃げずに答えていることにあろう。堤清二という不思議な経営者が何であったのかの一端が見えたことは(西武池袋線沿線で育ったこともあり)興味深い。やはり、豪腕な父に抵抗して東大で共産党に入党した学究肌の青年の延長という印象である。そのことは時代を変えたが、時代に振り切られたときには孤独であった。そのことはそのまま戦後経済史になっている。大量生産大量消費社会転換の立役者であった彼が何を考えていたのかを開陳しているし、バブル崩壊以降とは何であるかを経営者として厳しく見ていると思う。他面、「戦犯」としてまだその知る全てを語っていないという感想もないではない。特に、特異な堤家の実態、西武鉄道・堤義明との確執などは墓場まで持っていくのであろうか。きれいごとでは済まされなかった筈である。不動産屋が鉄道経営をしている、前近代的体質だったとされる(堤家は隆盛を誇っても、西武電車はいつまでも田舎くさく、鉄道というものを愛していない印象で、まともな労働組合も作られず、鉄道自体の近代化も遅れた)父と弟については何故か質問がなかったのか、解答がなくて編集でカットされたのかと勘ぐってしまう。それでも、日本的経営であるとか、高度成長に伴う日本の変化とか、経済と文化の関係とかを考えるのに必読の書であろう。男女雇用機会均等法の裏話も面白い(そう、堤清二はリベラルで合理的なのだ)。