仕事上の興味があって手に取った。
この冬(2010年12月)NTTドコモのLTEサービスが始まった。本格的なモバイルのインフラがやっと端緒についたというときに、モバイルの次とはいったい何なのか?本書の結論からいえば、コンピュータの環境化、である。
ケータイ(=もはやコンピュータといってよい)はまだ、人間が意識して持ち歩くもの=モバイルだが、無数のセンサやRFIDが世界にばらまかれ、人間の肉体にそれがアタッチされるようになると、コンピュータが空気や水、空、地面などと同じ、肉体をとりまく「環境」になる。好むと好まざるとに関わらず、この新しい「環境」から逃れることはできないだろう、というのが本書の主張だ。
「携帯の次、への歩みは確実に踏み出されている。
(中略)生活がコンピュータに包まれ、コンピュータの胎内での生活が始まるのである。」p179
技術の進化は常にランダムだ。思想も方向もない。しかし技術の現場からずっと下がって全体を俯瞰すると、そこには一定の方向性を持った進化の姿が見えるのかも知れない。筆者はセンサネットワークやモバイルコンピューティングに興味を持っているが、岡島氏の本論は、現在の技術の進化に一定の「解釈」もしくは「意味」を与えたといえるだろう。
「いずれにしろ、このシナリオは開かれ、もう閉じることはない。」(p138)
IT業界に身を置くものにとってはとくに目新しいトピックはない。いずれもここ1、2年の一般的な技術動向を紹介したに過ぎない。しかし、技術動向として読むのではなく「IT進化論」として読むといろいろな発見があると思う。一読をお勧めしたい。