ポケット解説 丸山真男の思想がわかる本―「日本の思想」から「古層」までわかる! 著者は、職業と言うよりは、おそらく個人的な趣味というか、自分のプライベートな時間を費やして、丸山真男の思想にコミットされてきたのだろうと思う。多少自説にこだわっているような箇所もあるが、それは僅かであり、気になるほどの偏りではない。著者の他の仕事や職業は不明だが、政治学の大学教員であるわけでもないようだ。むしろ、非常に深く勉強しているアマチュアというところだろうか。丸山の思想史方法論から古層論序章にいたる整理・分析は、著者の丸山に対する並々ならぬ理解の深さを感じる。
それから、政治学をやらない政治思想史はインフォーマティブな学問にしかならざるを得ず、ひと時代前の政治学者の様に政治学と思想史の両方をやった人たちの学問には、インテリジェンスを感じたという指摘には、30年ほど前から政治学をかじって来た私からすると、その通りだと叫びたかった。当時私などが講義を聴いた政治学者の何人かは、確かにそうした認識と価値とでも呼ぶべきものの緊張関係があったと思い出す。その意味でも、著者は政治学のセンスを現在の(若い)政治学者以上に判っている人だなと感じる。
また、最近の若い評者に見られるレベルの低い丸山批判への怒りは、まったく妥当なものである。
一点だけ、偽らざる感想として、著者がここまで丸山にコミットしてきたそのモチベーションとはどういうものであったのか、私には理解できなかった。私なら、職業として大学などで丸山の部下や弟子であるならともかく、利害関係のないアマチュアであるなら、ここまで精魂を傾けて読み込むことは、自分の自我を維持するためにも耐え切れないだろう、私なら出来得ないと感じた次第である。
最後に、丸山真男はここまで自分の仕事に対する理解者・貢献者である著者に感謝するべきであったろう。著者と丸山の付き合いや関係について私はまったく知らない。あるいは両者に濃密な交流もあったのかもしれない。それなら良いのだが、しかし、丸山が近代主義者として世上言われているような、どこかシラッとしたシニカルな態度が仮にあったのなら(あったのか否か不明であるが)、著者に対して無礼であろう。