作者作品にはマザー・グースを引用したものが数多くあるが、童謡の歌詞どおりに殺人が起きるのは『そして誰もいなくなった』と本書だけである。『そして〜』に較べると小粒の感は否めないが、それなりに面白かった。
マープルの推理も論理的に納得のいくもので、意外性も楽しめる。ただし、それはあくまでも説明であって、唯一無二の真相を純粋推理で解き明かすのは不可能なのが残念である。
また、グラディスからの手紙を読んだマープルが憤りに涙するところで終われば感動的なラストだが、それが正しく真相を解き明かした喜びに変わるのは蛇足に思う。
なお、「マザー・グース」とはアメリカでの呼び名で、本国イギリスでは「ナーサリー・ライム」と呼ばれているとマザー・グース研究家の鷲津名都江(元童謡歌手の小鳩くるみ)が著書の中で記しているが、本書の中でマープルは「マザー・グース」と呼んでおり、その点、実際のところどうなのだろう? 訳者が“Nursery Ryme”を「マザー・グース」と訳しているだけなのかも知れないが。
もうひとつちなみに、本書に用いられているマザー・グースは「六ペンスの唄」で、短編の『六ペンスの唄』および『二十四羽の黒ツグミ』にも用いている作者お気に入りのマザー・グースである。