カルタゴ史の本は意外と日本でも多いが、考古学的内容の本をのぞけばこの本がもっともすぐれたものであろう。
周知の通りカルタゴ史はもっぱらローマ史の文脈でしかわかっておらずその叙述は決まってローマよりである。資料の制約に関わりなく戦史というものは客観性に欠ける傾向があるが、本書ほど公平な叙述はみたことがない。物語的要素も極力廃し、古代地中海世界のダイナミクスをとうとうと流れる川のように著述する本書こそまさに本当の歴史書と言えるだろう。
類書との違いは歴史のパラレリズムを見事に表現していること。分析的な説明が少なく読者に飽きを起こさせないと同時にあくまで客観性のある叙述により理性的な読書ができること。が特に際だっている。
歴史ファンの一人としてこのような歴史書が今後も多く出ることを願うものである。