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もし自分の愛する子がそのように育ってしまったら,親として,あるいはそのような人物と関わりをもったものは,どうしたらよいだろうか。本作の問いかけの一つである。
著者は本作以前の「小役人シリーズ」では,社会問題を取り入れてきたが,本作ではより普遍的な「悪」が問題として取り入られているのだ。その結果,かえって読後の印象は薄くなった。作品が面白くないのはない。ただ,社会問題に巻き込まれた主人公のモラルを描くのと,悪に対峙した主人公のモラルを描くのとでは,作者に要求されることが異なってくる。
社会問題ならば資料集めをすればよいが,悪を説得的に描くには,自身の心のなかの虚無を徹底的に観想する作業が不可欠だ。体験しない悪を読者に説得的に提出することはできない。
小説として面白く書けているから,読んで損はないが,著者の本領が十分発揮されているとは言い難いと思う。
一言で言えば「生まれながらの犯罪者というのは存在するのか」というテーマを背景にしたハードボイルド。決して目新しいテーマではないものの、笑顔のまま他人を撃ち抜ける精神は先天的なものなのか、教育の問題なのか、社会的な要素が影響するのか等々、父親と探偵が夜を明かして議論する過程は読ませるし、考えされられることも多かった。タイトルの「ボーダーライン」は、殺人鬼が密輸商売をやっているアメリカとメキシコの国境という意味だけでなく、物語のあちこちで(それとなく)触れられている目に見えない境界線(殺人鬼と普通の人、社会と個人、会社と個人、親と子、愛情と憎悪、モラルと犯罪など)のことも示唆しているのだろう。
ストーリーとしてつまらない、ということは無い。だが、テーマが壮大過ぎて、いささかピンボケしているような印象があるのは否めない。そのため、他の作品と比較するとやや地味な印象が残る。
深く考えさせられる作品であることは確かなのだが。
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