1984年、LAに暮らすトレ少年は母リーバと二人暮らし。ある日彼は学校で問題を起こし、父フュリアスに引き取られる。犯罪多発地域でトレは幼馴染のリッキーとダウボーイ兄弟たちと育ち、やがて高校生に成長するのだが…。
ジョン・シングルトンがわずか24歳の時にメガホンをとり、アカデミーの監督賞と脚本賞の候補にあげられた作品です。私はオスカーの脚本賞・脚色賞にノミネートされた作品はどれも秀作ばかりだと考えていますが、この映画もまさに見るに値する一本です。
トレの父親は10代のときに親になった男ですが、その年齢に似つかわしくないほど成熟した人生観を持った人物です。彼が息子に徹底的に叩き込むのは、暴力の連鎖を断ち切るための倫理観です。トレはこの父フュリアスを持ったおかげで、黒人同士の憎悪や銃をめぐる犯罪が溢れかえる地域でもなんとか真っ当に生きることができています。
しかし少年たちが「転がり落ちる」のは容易なことです。その転がり落ちる様を淡々と描くことで、あるひとつのことを愚直に語ってみせています。
暴力を断ち切るのは暴力ではない。暴力を断ち切るのは暴力に背を向け、時に逃げ去る勇気であって、それは決して恥ずべき怯懦(きょうだ)ではない。
この映画は見る者に「人生の踏ん張りどころ」を見極めることの大切さを、静かに、諭すように語っているのです。