本書の元版は1992年に白地社から出版されたが、長らく絶版であり現在の古書価は定価の倍以上になっている。私は最近それをほぼ定価で入手できたので喜んでいたら、この文庫化である。タイミングの悪さに悔しがっていたのだが、本書の「文庫版のための少し長いあとがき」を読んだら、そんな思いはどこかに消えてしまった。普通ならわざわざ同じ内容の本を2冊も買ったりはしないのだが、この文庫版は特別である。
その「あとがき」は是非多くの人に読んでいただきたい。そこには、元版の刊行後に新たに判明したボン書店店主の鳥羽茂に関する事実が記されているからである。そのきっかけは、著者への鳥羽茂の実の妹からの連絡だった。それによって出生地や出生年、その最期が明らかになる。そしてさらには鳥羽の一人息子が存命であることを知る。
「巧すぎるよ、内堀さん!」とは解説を書く長谷川郁夫氏の言葉。この言葉は、「あとがき」を読んだ者にしかわからないだろう。これを読むだけでも買う価値はあろう。涙なくして読むことはできないとだけ言っておく。