シニカルで、シュールで、ブラックユーモア満載の短編小説集。
リリーさんといえば「東京タワー」で大ブレークする前から「器用で芸達者」というイメージがあって、物書き業はその多彩なアクティビティのひとつとしてやっているのかな、という気がなんとなくしていたのだが、最初の2編あたりはそのモンティ・パイソンっぽいセンスのブラックユーモア全開で、いかにも才気走った書き方をしているものの、特に最後の2編では、「希望」とか「未来」とかのイメージが見え隠れして、それまでの作風から抜けだそうとしているかのような印象を受ける。元々、「まっとうなことを言うときの気恥ずかしさを冗談で覆い隠す」タイプの文章を書く人なのだとは思うが、特に最後のごく短い一編では、自筆で帯に書いている「なにかにつまずいている人のほうが魅力的」をまともに言おうとして不器用になっている感じがして、その「らしくなさ」が読む者をやさしい気持ちにさせる。この一見「らしくなさ」を「なんだよガッカリ」ととるか「これこそがリリー」と取るかでこの短編集の好き嫌いが分かれることだろう。