10年ほど前、何かの折に熊本の「猿まわし劇場」を見る機会があって、正直辛い気持ちになった記憶があるので、本書もおそらく朝日か毎日だったかの書評を目にしなければ読まなかったと思います。ただ、猿まわしと被差別部落とのつながりについては、そういえばなにかで読んだか聞いたかで知ってはいたのに、著者をテレビやなにやかで目にする機会があっても考えてみたこともなかったのは、ひとえにその話芸と芸風の明るさの成せるわざでしょうが、そんな人からこういった重たいお話を伺うと、もちろん単純に「笑える」エピソードも多いのですが、読後、心のなかに澱みのようなものが残ってしまっていることに気づかざるをえませんでした。特に序章に書かれている母にぶつけた「どうして自分を部落の子に生んだ」云々の言葉は、その母の心中を察すると、そこに到る蓄積や事情があるにしろ、いや、あるであろうからこそ、胸につまされるものがありました。