2008年のリーマンショックは、フランスのボルドー・ワインを頂点とするワイン市場も直撃した。
しかし、ボルドー神話そのものが崩壊したわけではない、そのわけはなぜか?
この問いに、ワイン市場の経済構造に深く迫ることによって解答を見出そうとているのが本書である。
著者は、読売新聞社在籍のワイン・ジャーナリスト。長年にわたりワインとシャンパンを愛し、執筆してきた人である。
副題にもあるように、ワインをただ味わい楽しむ存在としてではなく、「液体資産」として投資対象にしている人たちがいる。
ヨーロッパやアメリカでは、株式投資や債券投資を行う投資家が、絵画や骨董品などの美術品などと同様、息の長い投資対象としてワイン投資を行っているのだ。
ワイン投資は長期の投資、投資で利益が得られなくても、熟成したいいワインが手元に残るではないか、というのが投資家の見解だが、日本人にはまだまだ難しいようだ。なんせ奥が深い。
私にとって非常に興味深かったのは、第4章 香港・中国は「ワインの覇者を目指す」であった。
2008年8月にスピリッツを除くワインや酒類の関税を一気にゼロにした香港は、「アジアのワイン首都」を目指しているという。すでに3年前の東京に追い付いているというから、この勢いは無視できないものがある。
香港は地理的には、シンガポール、上海、北京、東京など主要な消費地の中心に位置しており、物流網も完備、金融システムも安定しており、中国本土へのゲイトウェイである香港から関税ゼロでワインが再輸出されるからだ。
中国はワイン消費だけでなく、ワイン生産国としても大きな将来性があるというレポートがでているらしい。
まさに中国おそるべし、である。
ワイン市場のプレイヤーである生産者(シャトーのオーナー)、流通業者、投資家、醸造コンサルタント、格付け評論家、のそれぞれについて、実際にインタビューした経験も踏まえて執筆された本書は、読み応えのある充実した本になっている。
ワイン好きならいうまでもなく、ワインにあまり関心がない人にも一読を薦めたい。