本書の最大の特色は、被災地の現場で今何が起きているか、どう対処しているか、どのような物資、施策が必要かをほぼリアルタイムにドキュメントしていることである。それを優れた読みものに構成してくれた。本書は、評者のように身体の都合で被災地に出向けない者にとっては最大の贈り物である。
被災地に馳せ参じた延べ5000名を超えるというボランティアナースとその関係者たち(「キャンナス」という看護、介護などの専門職と関係者の団体)が、メーリングリスト(ML)を利用して知らせ、連絡し、報告した3月11日から9月10日までのメール数千本から158本を選び抜いて本にした。時系列で並べられているので時の経過と発生する問題、課題の推移、今後への要望などがよく分かる。
被災地に数日か駐在しての活動が多い。インフラが悪いから、活動するスタッフがオムツトイレを使っていたと分かり、唖然とし、納得した。リアルなのだ。5月頃になるとリピーターのボランティアも出てきて、キャンナスの息の長い活動に感銘させられる。
地元のキーパーソンのような方が、これからへの伝承、孤独死や自死する人を出さないようにするなどが大きい課題だという。そういう言葉を日常活動の中で聞いてMLに残してくれた。
8月1日には、町の伝統行事の川開きがあり、そこにボランティアたちも集まり、その前を避難所で一緒に活動した中学生たちの吹奏楽団が通過していくのを見て涙、涙となった。そうして少しずつ復興の灯がともり始める。しかし、8月16日のメールに、11日に近くなるといつも以上に不安定になる人が多くなるとある。そのような「日常」を映しとめたメール群である。本書は貴重な証言集でもあるのだ。
ボランティアに参加して活動したことへの感謝のメールも多い。いかにその場の活動が意義深かったかが推察できる。
本に載せられなかった膨大なメールがMLにあるようだ。それを素材に詳細に科学的に分析すると学術資料、学問的レポートにできるのではないか。写真もあろう。アーカイブを作れないか。そんなことを思った。本当に、読み捨てられない本である。