原版は驚くべき精巧な作りによる見事な本であり、丁寧な作り、ユニークなコンセプトによる体裁には感服する。貴重な資料としての配慮やディランへの敬意があふれている。
本書は日本でも近日放映が予定されているマーチンスコセッシの「Bob Dylan: No Direction Home」(素晴らしい作品である)の関連書籍であり、インタビューのCD(この邦訳は便利)やレコードデビュー前のコンサートのチラシやチケット、新聞の切り抜き、宣伝用のグッズ、写真、「Blowin’ in the wind」などいくつかのDylanの歌がはじめて生まれた時のメモ書きなどが、そのときの便箋やメモ用紙をそっくり再現してスクラップされている。これらはほぼ原版と同じレベルである。レプリカとはいえ、それらを手にとってをながめていると、私の中に刷り込まれているDylanの歌が生まれた「瞬間」を感じられるようなリアルさを体験できるほどである。この感覚は、以前発売された見事なCD-ROMや他のメディアでは味わえないダイレクトな実感を伴う。
この本のUS原版は感服するほどの労力と愛情と丁寧さをもって作成された「傑作」であるが、日本版は装丁はほぼ同様の作りとなっているが、糊付けなど細かなところが雑であり、あまり丁寧な作りとは思えない。ディランの自伝の版権も買い取った本書の出版社は書籍製作のレベルが良くない。作り具合が原版と比較して粗雑で、ディランへの敬意や文化への畏敬の念が薄いように感じる。US原版はすばらしい出来であり、本文も英文で読み通せるのでそちらをお勧めする。(評価はあくまで原版に対してである)