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ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集
 
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ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集 [単行本]

宮沢 章夫
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

あの夜、歌舞伎町のビルに火を放ったのは自分なのか、それとも?―泥酔した記憶が定かでない中古レコード店主は自問を繰り返す。不穏な日々を彩るように流れるディランの歌声。やがて不審な客が店を訪れ「火をつけろ」とつぶやき姿を消した…。あの「九月十一日」の直前、東京・西新宿を舞台に、変容する世界を描く表題作と、三十一年間借りたままの本を返しにゆく奇妙な一日を写す「返却」。現代演劇を刺激し続ける著者が挑む“小説の冒険”。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

宮沢 章夫
1956年静岡県生まれ。劇作家、演出家、作家。「遊園地再生事業団」主宰。1992年上演の戯曲『ヒネミ』で岸田戯曲賞を受賞。『時間のかかる読書』で第21回伊藤整文学賞(評論部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 228ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/08)
  • ISBN-10: 4103974044
  • ISBN-13: 978-4103974048
  • 発売日: 2011/08
  • 商品の寸法: 19.4 x 13.8 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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小説のタイトルとしてはとても気になるもので,書店で新潮4月号の表紙を飾っていた時にも手に取ってみたりした。
「サーチエンジン・システムクラッシュ」の主人公である「町村」と同じ名前の人物が30年以上前に借りた本を返しに行く「返却」は,その設定のシンプルさとはまた違った,幻暈を覚えるような小旅行である。「サーチエンジン〜」でもそうであったように,町村は今回もまた「あったはずの場所」を探して彷徨ってしまうのだが,今回のほうが読後感としては心地よさがあったりした。
また,表題の「ボブディラン〜」においては,2001年9月1日に起きた歌舞伎町ビル火災から11日間の,主人公に訪れた「世界の変容」を描いている。世界の変容については脳内物質における分泌の問題によって起こることがあるが,ここしばらくの社会情勢や天変地異によって実際に起きているとされているようである。それは,1995年に起きた地下鉄サリン事件と阪神淡路大震災の前後であったり,2001年のアメリカ本土へのテロ事件の前後であったり,2011年の東日本大震災の前後であったりするわけですが,そろそろ私たちを取り巻く環境に対して,私たち自身がついていけなくなっていると実感させられることも多いこのごろです。
著者は,いつものエッセイにみられるような軽快な文章と,舞台にのせたときのあの不思議な感じをミックスさせた本書を私たちに示してくれている。これが,2010年代の新しい枠組みであったりルールであったりするような気がしてならないのです。「サーチエンジン〜」を読んでから読むのもよし,本書を読んでから「サーチエンジン〜」を読むもよし。あれから11年たって,一緒に読むことができたのも幸運だったと思うのです。
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By yukkiebeer #1殿堂 トップ50レビュアー
■表題作『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』
 西新宿で中古レコード店を経営する内田と、それを手伝う学生のサトルが主人公。
 2001年9月1日の深夜、歌舞伎町でビル火災が起こる。その翌朝、内田は足に怪我をして店の床で血を流していた。ひょっとしたら俺がビルに放火したのか?内田は記憶の中に事件と自分の関わりを探そうとするが…。

 1995年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件についての言及もあり、9・11へと向かう10日間の時間軸の中で150頁弱の物語が展開していきます。私の記憶の中では同時多発テロという、あまりにも大きな世界の変容の影にかくれてしまって、歌舞伎町のビル火災がほぼ同時期に発生していたことなどすっかり忘れていました。

 思い返せば本当に痛ましい事件の連続に、世界をしかとはつかみきれないという思いが私たちの中に澱のように積み重なってきてしまったように思います。内田がかつて愛した知花という女性がつぶやいた「あなたはまだ本当のことを知らないのでしょう」という謎めいた言葉がこの物語の奥から前面へとじわじわ迫り出してくるように見えるのも、事の次第をもはや私たちはどんなに努めても捉えきれないという諦めにも似た思いが支配しているからでしょう。

 しかしその諦念の中に安住することは危険だという思いもまたかみしめたいものです。

■併録作品『返却』
 51歳になる私・町村は、31年前に借りたまま返しそびれた二冊の本を八王子にある都立図書館に返しに出かける決心をする。電車を乗り継いで、記憶を頼りに図書館を探すのだが…。

 この書評を書く私自身も、昨年、ほぼ30年ぶりにかつて暮らした都内の街へ思い立って出かけ、そこにあったはずの区立図書館を探してさまよい歩いたことがあります。図書館に借りたままの本が手元にあったわけではありません。たまさか池袋で観た舞台劇が、昭和の時代に設定されていたのがきっかけで、遠い昔に通いなじんだ図書館に久しぶりに足を運ぶことで、自分の来し方を見つめてみたくなったからです。

 今から一年をさかのぼらない時期にあったそんな個人的な経験に照らすと、この『返却』という中編小説の主人公は、真に本を返したくて八王子まで足を伸ばしたというよりも、電車を乗り継ぎ八王子市内を歩き回る中で、あの頃その時の自分を、記憶の中からたぐり寄せることにこそ本当の目的があったかのように、私には感じられてなりません。
 そして、当時の自分があって、今の自分がある、ということの不思議であるような、それでいてまた当たり前のような思いに改めて立ち至ります。町村も私も、過去と現在を短時間で往来して心がざわつく年齢になったということでしょうか。

 借用本の返却の顛末自体が想定外の驚きを与えてくれるわけではありませんが、小さな旅路にある主人公・町村に、この私自身の心と体がぴったり寄り添う思いがする、佳品といえる小説でした。
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前衛的 2012/1/28
By 凱晴 トップ1000レビュアー
少し前衛的。

本の題になっている「ボブディラン・グレーテスト・ヒット第三集」は、サリン事件、阪神淡路大震災、歌舞伎町ビル火災、そして、9.11と、主人公が災害の中を彷徨っているかのようで、新宿の不安定さやアナーキーさ、理不尽さ、無関心さ、と相俟って、不思議な危うさが表現されている。その危うさは、中古レコードのマニアックな世界とは裏腹にリアリティを感じるけれども、前衛的な分、万人受けは期待できそうもない。

一方で、「返却」は、31年間借りっぱなしの本を返しにいく。ただそれだけの話なので、読み流してしまうと簡単に最後のページにたどり着く。かといって、小難しく読むような本ではない。無意味のようで意味がある不思議な感じだ。
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