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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
リアリズム溢れる描写,
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レビュー対象商品: ボヌール・デ・ダム百貨店 (単行本)
百貨店の興隆そのものこそがこの小説の主人公である。流通・販売の仕組み、ディスプレイの様子、従業員の就業実態、消費者の姿、当時の女性達の購買意欲をそそった品々、その他にも百貨店に関する多くの事柄を 上手に小説に溶け込ませており、ストーリーを楽しみながらもそのまま時代のワンシーンを知ることの出来る貴重な資料的小説だ。 万引きや病的なまでの衝動買いなどには時代の隔たりを忘れさせる共通性があって、思わず考えさせられてしまう。 もちろん周辺事情の描写にも手抜かりはない。 既成の枠にとらわれず芽を出すものがあれば固定観念やプライドが邪魔をしてその流れに乗れないものもあるわけで、 ゾラはその冷静な筆でこの二つの価値観の対立と終着点を鮮やかに描き出している。 それが一番よく表れているのがムーレ経営するところの大型百貨店「ボヌール・デ・ダム」に気押されてそれまでの商売では太刀打ち出来なくなり、 とうとう店を閉めざるを得なくなる昔ながらの個人商店の衰退の描写だ。 彼らは百貨店の存在を決して認めず、頑ななまでに自分のやり方を貫こうとし続ける。 商品は埃を被り客足の途絶えた店内は静まり返り、薄暗い。もはや破産に向かっていることは認識しているが、考えを変えようとはしない。 そのような個人商店主達の姿には、時代の奔流にのみ込まれるしかない者の悲哀が漂う。 しかしゾラは百貨店の成功を褒めあげるわけでなく、個人商店の衰退を貶めるわけでもない。どちらにも肩入れしないその眼はあくまでも公平で、冷静だ。 郊外型大型店舗やネットショップの出現により、これはおそらく現在でも日本(…に限らないかもしれないが)のどこかで 毎日のように起きている現象だから、その慧眼には驚く。ゾラ自身は100年後を予想したつもりはなかったとしても。 私自身、同じ様な運命を辿った小売店経営者の子供だったから、ドゥニーズの叔父・ボーデュの気持ちが痛いほど解るし、 そのさびれた店内や埃の被った陳列品の容赦ない描写には、昔の我が家を思い出して胸が痛むほどの、恐ろしいほどの真実味を感じる。 「ボヌール・デ・ダム」に真っ向から戦いを挑む、元店員にして今は独立した個人店主・ロビノーの奮闘も同様だ。 資本力で全く歯が立たない相手に値下げ競争を吹っ掛け、結果、店は決定的な痛手を受ける。破綻を予感したロビノーの絶望には哀れを催す。 それはさておき、この小説は貧困や病や不条理や狂気や妄執といった人間の業みたいなものを冷静に、鋭くえぐるように書き続けたゾラにしては珍しく 幾多の悲惨さや暗さが大きく緩和され、しかも女主人公が幸せになる恋愛を織り込んだ作品なので、私には異色の明るさを放っているように見える。 もちろん病的なまでに高まる人々の消費意欲が大きなうねりとなって立ちはだかり、終始曇天のように垂れこめているのだが、 「ボヌール・デ・ダム」の売り子である優しく善良で清純な娘・ドゥニーズの存在で作品全体がかなり明るくなっているのは確かだと思う。 ムーレを愛しながらもその金や権力や誘惑に屈せず、それゆえかムーレをいっそう強く惹きつけるドゥニーズ。 自分の良心に従って、素朴ながらも誇りを持ち生きる彼女の存在にはホッとさせられる。 それにしても自分の百貨店の魔力に魅了されて商品に群がる、という形で多くの婦人達を征服しながら、 たった一人の、それも何人といる自分の従業員にすぎない一介の売り子の心をつかめなくて苦しむムーレの描写がいい。 あるがままの感情の動きを包み隠さず表現しているので、ムーレの葛藤が生で伝わってくる。 ゾラのこういった人間の生理や衝動をストレートに表現するところがとても好きだ。 紙の上に書かれた架空の人物のはずなのに、その体温を感じるのだ。つい俗な気持ちでハラハラしながら見守ってしまう。 好きな人が自分のものにならないのなら金があっても何の役にも立たないと想いを募らせるところなどは妙に説得力がある。 巨万の富を手にしてなお手に入らないもの―それが好きな人の心だったって…う〜ん…心憎いな、ゾラ。 フランス語は門外漢なので原書のニュアンスは解りようもないのだが、他社の版と読み比べて二度楽しめる。 これまで入手出来なかったゾラ作品が近年次々と翻訳され、ルーゴン・マッカール叢書がついに全部揃ったのはとても嬉しい。 決して明るいとは言えない一族の物語のなかで、私にとってこの作品だけは読んでいて緊張を強いられず、ほっと一息つける貴重な一冊だ。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
夢と悲哀に満ちた百貨店の裏表,
By モイスチャ (Macの中) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ボヌール・デ・ダム百貨店 (単行本)
互いに足を引っ張り合う百貨店の売り子たち、見栄と体裁を気にしつつ本性は隠せない客の貴族婦人ら、愚痴と妬みばかりで現状を変えようとしない百貨店周囲の小規模店店主。そういった人々の様子の心理描写を素直に表現している。貴族の世界や、売るための女の煽り方、男女のつながり、隣人とのつながり、そういったもの現在生きているかのように書ききっている。1880年ごろの小説のようだけど当時と現在で何が違うのか、何も変わらない百貨店の様子について驚きを感じた。この小説はとても良い。 この小説の存在、意味、価値を現すのは無理であるくらい考えさせられるし、それでいて溜飲が落ちる納得の小説だ。
5つ星のうち 5.0
きらびやか…のようにも見える…,
By snc "704" (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ボヌール・デ・ダム百貨店 (単行本)
初めて読んだゾラの小説が、この本でした。(あとがきの“ハッピーエンド”という言葉に魅かれて…)感想としては、まず、読みやすいです。ボリュームの割りに読みやすかったです。 あと、当時のフランスの百貨店の様子が綿密に書いてありますので、興味のある人が読めば面白く感じると思います。 ドレスの様子、異国から輸入された絨毯の様子、そして主人公の目を通じて見えるそれはそれはきらびやかな百貨店の様子… 女性作家の書くような細かな百貨店内の描写ですが、そこはやっぱりゾラ。 なんとなくさっぱりしていると言いますか… 私自身が恋に関しては未熟者なゆえ、時々主人公たちの気持ちを理解する前に話がどんどん進んでしまったこともありましたが、やっぱり面白かったです。
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