自分が生まれてこなかった世界=(別の誰かの活躍で)全てがうまくいっている世界。
こんな残酷な切り口をよく思いついて、よく描ききったと思う。
徹頭徹尾、己の至らなさを思い知らされる主人公は痛々しいこと、この上ない。
しかし、例えば”世界に一つだけの花〜”とか言う歌に偽善を感じる人なら、著者の言いたいことが伝わると思う。
「他者との比較によるコンプレックス」は、ただ安易に逃げれば良いわけではない。
何でもバランスで、ある程度は他者と比較しないと己の何かに気付けないことが多々あるのだ。
それなのに必死に目をそらして「とにかく人はそれぞれ素晴らしいよねっ」と言い逃れる軟弱卑劣な精神に、
この本はこれでもかと現実を突きつけるものだろう。
まあ人間の土台なんて生きているうちに出来上がるものだから中高生にここまで求めてもねえ、と言う意見もわかるが、
無責任かつ単純にオンリーワンを説く幼稚な大人ばかりに育てられる子どもたちの将来を憂えて、
たまに冷水をあびせてくれるものが必要だと思う。そんな本書に星5つ。