鮎川賞受賞作である。
島田御大の一押しだし、本格ミステリ系新人賞の受賞作ということで、かなり期待して読んだ。
その期待の通り、という点はあった。
ただし、期待はずれ、という部分が、私には許容できない作品だった。
舞台はアメリカであり、ストーリーは探偵社の探偵がメインとなって進行する。
だから、作品から受ける雰囲気は、一種ハードボイルド的なものがある。
そのあたりが、たぶんリーダビリティとなっているのだろう。
しかし、謎の提出には疑問を感じた。
まず、謎の中心が明確ではない。
もちろんアレなのだが、それがあまり強烈ではない。
つまり、謎のプレゼンテーションがうまくないのだ。
そして、それを謎と思っているのは関係者のみなのだが、それほど深刻に感じてもいないという点がひっかかった。
つまり、自分たちの身に直接的な危険が及ぶのでなければ、本業をそっちのけにしてまで捜査するか?という現実的な疑問がある。
なにより、ラストでの真犯人の指摘であるが、正直エエッと思ってしまった。
いや、悪い意味での意外性なのだ。
つまり、その人物を犯人と特定するべきロジックが、ほとんどないのである。
不可思議な謎の解明は、ある趣向が明らかになることでクリアになるのだが、これも“ちょっと”という感じだ。
もちろんこの趣向を用いてはいけない、というわけではない。
しかし、不確定要素というか、推測の入り込む余地が多すぎる。
徹底したロジックの本格、というスタイルの作品ではない、ということなのだ。
詰め将棋でいうところの、余詰めあり、という感じなのである。
これは、私の読み方が悪かったのかもしれない。
つまり、著者は、けっして本作をフーダニットとして書いたわけではないのだ。
本作はホワイダニットの作品であり、フーダニットを期待した私が悪いのである。
そのネタとなるアレは、確かに島荘なら好きな設定かもしれない。
しかし、もっとうまく扱われていれば、もっと意外性を引き出せたのではないかと思う。
これは少々残念なところであり、新人の作品といっても、受賞作なのだから、もう少し完成度が高くても良かったと思う。
そして、このネタは微妙なもので、その取り扱いには神経を使わなければならないし、もちろん映像化など難しいだろう。
特にテレビでは。
そういう意味合いで、私は本作は、あまり評価できない。
途中までは、けっこう面白く読んだのだが、ラストで腰砕けになった感じである。
ただ、あのダイイング・メッセージの設定は、ちょっと面白かった。