色校の鬼のような一冊だが、その結果はじつにすばらしい。特に実物と比べると本書の優秀さがよくわかる。ここに収録された作品の一部が2011年初頭に山種美術館で来日公開されたが、当然ながら退色を防ぐために照明が薄暗くなっており、特に暗い部分の細部は必ずしもよく見えない。本書 p.99 の鳥居清長の作品は、窓の外が真っ黒に見える。ところが本書では、その暗い中に微妙な細部があることがはっきりとみえる。実物を観るより本書を観る方が、一部とはいえ細密な鑑賞ができるのだ。
その意味で、オリジナルを普通の照明の下で手に取ることはできない以上、求めるものによっては本書の図版は、美術館で実物を見るよりもよいかもしれない。むろん、思いっきり近づけば版面の色のドットが見えてしまうという点では実物にもちろん及ばないが…… 当然ながら解説その他も文句なし。