『ボクシング・デイ』です。
長所
・佐山先生の、しあわせについての語りは良かった。佐山先生は、理想的といってよいほどの教師でした。
・タイトルのボクシング・デイを活用したラストシーンはきれいで、印象的で、読後感は良かったです。
・栞の周囲の友人たちがよく描けている。特に敦志くんがノートの件を通じて成長する場面が良かった。
・巻末解説が的確で、どういう具合に栞が成長しているのか分かりやすい。
短所
・冒頭とラストが、成長した栞の回想という形だが、冒頭の文章が児童文学にしてはかたい。しかも佐山先生に関する説明に終始していて引き込まれない。
・第一章で栞の発音不安が書かれている割には、第二章の台詞では問題なく「ち」も「き」も発音しているのが矛盾に感じた。それでいて第三章のことばの学校での具体的な練習シーンでは、「ち」「き」の発音に苦労しているだけでなく、他の音にも不安があることが後出し設定。
・拾ってきたマグネットがたまたま「ち」「き」というのはご都合主義すぎます。
・運動会の競技に棒たおしがある。少数ではあっても実際行っているところもあり、あっていけないわけではないですが、危険が多いためほとんどの小学校で実施されていないはずの競技をあえてやっているという設定が不必要に感じる。
・敦志くんのノートが見つかるのが、ちょっとご都合主義を感じます。
・いくら小学生視点とはいえ、工事作業員を汚いもの扱いしているのはひどすぎ。
総合としては、さほど大きな事件も起きず、日常描写の中で、主人公栞の成長を上手く描いていたと思います。児童文学というにはその成長ぶりは分かりにくく、巻末解説を見たらなるほどと思えるものでしたが。敦志くんの方が分かりやすかった。
その一方で気になる短所も多かったです。
そういった短所をスルーして読めばそれなりに面白いと思います。
★3