いい本。最近は若手の僧侶による身辺雑記や「これからの仏教」論が増えているが、そうしたジャンルの本のなかでも出色の出来だと思う。ほほえましくも切ない日常に関する記述とガチ宗教or人生論が適度にミックスされた文章が巧みでデビュー作ながらエッセイストとしての才を強く感じさせ、また随所に引用されている釈尊&空海の名言とそれをめぐる著者の思索が、先人たちによるグレートな言葉の「わからなさ」も含めてじっくりと語られており、共感とともに学ぶところが少なくない。いまここの現実と対話しながら、伝統のなかで見事に精錬されてきた仏教に真摯に向き合っているお坊さんのもの言いには、評者のように宗教一般に関心のある向きのみならず、多くの現代人が感じ入るところ大なのではあるまいか。