何の予備知識もなく、もちろん著者も知らず、毎月必ず一通り眺める
新潮文庫の新刊コーナーにあり、「精神に障害をきたすとき、その目には
何が映っているのか。」という帯、統合失調症闘病記とある副題に惹かれた。
そして中身をパラパラとみてみると、どうも実に整然と活字が組まれている
気がして。
弁護士としても、少なくない数の同病の人と接してきたこともあるし、
それを措いても、「事実」としてどうにも知っておきたくなった。
文章も整っていて、非常に読みやすい。発病していくところなんかは、
こちらはこのあと発病すると知っているから、そう思って読むが、
そうでもなければ全くこれが病気前夜とは分からないくらい、
論理的で、やはり彼らの認識する「事実」と(そんな抽象的なものがあるとすれば)
我々一般の認識する「事実」との境目が非常に曖昧であることが
否応なしにわかる。
前に「東郷室長賞」という名前ででていたらしく、そのタイトルで調べると
★一つになっているけれども、僕はこれは傑作だと思う。(このあたり
もうすでに筆者の口調が伝染してるけど)
「妄想」なのか「ほんとに起きたことの記憶」なのか、それがわからない
くらい一貫しているところが、僕にとってはミソだと思うし、それが
読みにくいのはやはりこの手の人たちが「難しい」理由そのものな気がします。
後半はたしかに理屈が勝っていて、ひたすらややこしいところがありますが、
僕は、この本の前半だけでも620円払って読むべき本であると思います。