「SIGNALS」以降の、シンセとシーケンサーを大胆的に取り入れた時期の、もっとも煌びやかだったラッシュの最後のアルバムであり、まさに80年代の総決算的なアルバムと言える。(ただし'89年の「PRESTO」は全く別路線)
メロディの良さは、ラッシュの全アルバム中1,2を争い、どの曲もコンパクトで美しく、判りやすいカタルシスがある。
特に、いわゆるプログレ・ハード的なアンサンブルを極限まで洗練したような「Force Ten」と、宗教歌のようなドラマ性がある「Mission」、動きまくるベースラインと独特のコード進行が余りに独創的な「Turn the Page」は、ラッシュの長い歴史の中でも代表曲と言えるだろう。
これほどシンプルで判りやすいメロディなのに、通俗的な下品さが無いのは、ゲディ・リー(Ba,Vo)の淡々とした歌いっぷりゆえか。
それとも、THE POLICEに影響を受けたと言われる、理知的でクールなギタースタイルゆえか。
それにしても個性的なバンドである。ごく初期にLED ZEPPELINの影響が感じられる他は、作曲面において常に独創的であり、誰にも似ていない音楽を、たった3人で30年にもわたって作り続けるのだから、「現代の奇跡」と言っても過言ではないだろう。
他の「プログレ・ハード」と呼ばれるバンドの多くは、インスト部分の凝ったアレンジを取り除けば、歌メロは「単なる古典的ポップス」だったりする事が多いが、ラッシュは全く違う。何しろポップスの約束事にほとんど囚われておらず、根元的な意味で「ロック的である」としか言いようがない。
「ウッドストック」に聴かれるような、「ロックがまだ約束事を持たなかった時代」の息吹を未だに感じさせる、まさに孤高のアーティストである。