ホンダは創業者の理念を保持しながら、革新を続ける稀な企業だと以前から思っていた。創業の理念を失って迷走するソニーとも、創業者に縛られ続けたかつての松下とも違う。何しろ偉大な創業者を追い出した会社である(もちろん身を引いた宗一郎氏も偉いのだが)。
本書は伝説の中のホンダではなく、元社員として歴代トップたちと直に接した著者による生身のホンダを伝える本である。全員がレースに直接関わった理系の歴代社長、著者を含めた文系社員の役割、その元締めとも言うべき存在だった藤沢武夫の教え等々。「お前さん、いつから不動産屋になった?」の言葉は耳に痛い人もいるだろう。
海外駐在を重ねた著者の経歴からくるビジネス論も面白い。即断即決できるように日頃から準備しておく、などは経験に基づくだけに説得力がある。
うわべだけの企業理念をホームページに飾っている企業は山ほどありそうだが、会社を救い成功に導く価値観を持っているところはそう多くないかも知れない。簡単にまねはできないとしても、知っておく価値はあるだろう。