70年代半ば、初めてこのレコードを聞いた時の俺は、サザンソウル狂いの20代そこそこのガキだった。同時に発売されたスタックスソウル名盤シリーズのジョニーテイラー、ソウルチルドレン、シャーリーブラウンらには見事に心の琴線を揺さぶられ、スタックスサウンド一直線の青春時代を過ごすことになった。しかし、残念ながらこの名盤はパス。当時の俺は、この良さにすぐ気が付くことができなかった....
数年後の20代半ばを過ぎた頃には、サザンソウルから脱して、シカゴブルースやモータウンをディグするようになっていた俺だが、ある日なんとなく手にした、このレコードを聴いてぶっ飛んだ。デトロイトのストリートの臭いをプンプンさせた若き5人組が、ミュージュックビジネスでの出世をもくろんだやりてのプロデューサードンデイビスにしごきにしごかれて創り上げた、スゥイートでハートフルなコーラスワーク。たが、その裏にある一触即発の危険をはらんだ緊張感が凄い。全曲が名曲で深く傾聴する価値があるが、特に俺が好きなのは、Thank You For Your Love, Gimmie Some Sweet Soul Music, Mary Don't Cha Wannaの3曲だ。
こんな都会的で洗練されたソウルが、あのオーティスやサムアンドデイブで有名なダウントゥアースなスタックスからリリースされたとは。本レコーディング直後にリードボーカルが抜け、ドンデイビスとも袂を分かち、ラインアップが固定できなくなったドラマティックス。タイトなリズムセクションに、時には限りなく甘く、時には激しくダンサブルに絡みつくシンプルでパワフルなボーカルとコーラス。正に天の配剤による一期一会のレコーディングだったと言えよう。
渋くて野太いバリトンのシャウトに絡みつく鋭角的で切り裂くようなファルセット。いつまでも新鮮でエバーグリーンな輝きを失わないシンプルで暖かいバッキング。ホットでソウルフルだけど、全然暑苦しくなく、クールで爽やかでリッチなサウンド。真夏のビーチで水着姿の美女を眺めながらHot Pants In The Summer Time が聴けたらサイコー。