本書はD&Dのグレイホーク世界を舞台にした活劇ファンタジーである。本書の主な魅力は4つ、キャラクター、ゲーム的ギミック、冒険活劇、そして魅力的なファンタジー世界である。キャラクターは主人公であるタフなレンジャーのジャスティカー、ピクシーの”レディ”エスカーラ、石炭好きで炎を吐く狼の毛皮のシンダーズ、お喋りで勇者と冒険に一家言ある御者のポークという面々が、掛け合いながら共に冒険を行う。ツッコミ役のエスカーラとからかわれるジャスティカーのコンビが何とも言えない名コンビとして苦難を陽気に乗り越え、シンダーズとポークがそれぞれの価値観で企まずしてボケをかますというチームが成り立っている。ゲーム的なギミックとしては、D&Dを下敷きにしているだけに鉄のくぎやロープ、油瓶などを効果的に活用しながら迷宮を攻略するのが経験者をニヤリとさせる。そしてジャスティカーの剣とエスカーラの魔法が繰り広げる活劇は、商隊の護衛から街での死闘を経て古の魔術師の迷宮へと息もつかせずに展開される。正直、本作の方がよほど映画で見たいと思わせる出来映えである。その活劇を引き立てるのが、積み上げられてきたグレイホーク世界の設定である。デヴィルとデーモンの対立、古の魔法、個性溢れるモンスター、対立し合う悪同士などが活劇に深みと広がりを与え、魅力的なファンタジー小説に仕上げている。
「ダークエルフ物語」などの他のD&D小説と比べても遜色ない面白さの本書はエンターテイメントとして特級品である。