読んでいてためになる部分もあります。この手の著作の中では、比較的ためになる本であったと思いました。その上で批判的コメントを加えますと・・・
■ あまたの経営学書に共通ですが、結局こうした著作は、現実のすぐれた企業を後追いで分析するという、ベスト・プラクティス紹介業にしかなり得ないのかという不満が残ります。アップル、IKEA、アマゾン、Zara・・・今はこうした企業が旬ですが、著者は、10年後にはまた別の「旬」を追いかけて、別のことを書いているんじゃないか、だとしたら、そりゃ一体何なんだという疑問は消えません。10年前にはスターバックスとか eBay とか書いてたりして。
■ 議論している企業がすべてコンシューマー向け業種です。そういう本だからと言えばそれまでですが、世の中には、産業財で勝負している企業も沢山ある訳です。そうした企業は全く異なる競争条件、競争戦略で戦っており、この本の説く内容は殆ど参考になりません。どうして経営学書は消費財メーカーにばかり注目するんでしょうね。学者やコンサルタントは、例えば住宅メーカーに木材を供給する木材メーカーとか、年金基金の運用を請け負う投資顧問業とか、知らないから見ないということなのでしょうか。だとすれば、世の中の企業経営のほんの一部しか見ていない訳で、彼らはそのことに気づいているのかなというのも、私の疑問です。
「まあそういう本じゃないんだから、書いてないことの文句は言わないで良いじゃん」ということであれば、まあそうですけど。であったとしても、詰まるところ、セオドア・レビット著『マーケティング近視眼』を超える著作は少ないなあというのが感想でしょうか。みんな頑張ってくれよ、『マーケティング近視眼』が発表されたのは1960年だよ。