<9巻までの暫定評価>
トレパネーションという設定や幻覚の視覚的表現は斬新なんだけど、結局それ以外の設定やその後の展開をあまり考えないまま連載を始めちゃったという印象。
序盤、頭蓋骨に穴を開けて幻覚が見えるようになり、ヤクザの親分の心の闇を払う辺りまでは時間を忘れて読みふけってしまうくらい面白かったが、女子高生の話あたりから展開が行き当たりばったりで、先の展開が思いつかないからダラダラとページ稼ぎをしているだけになってしまっている。しかも大ゴマが多いのでなかなか話が進まない。
多分、主人公が出会った人々の「心の闇の象徴」であるホムンクルスを取り除いていく過程で、主人公も自身のアイデンティティや生き方を模索していくという話をやりたかったのだと思うけど、その辺のドラマが上手く描けていたのは2巻辺りまで。
結局、主人公のキャラ付けや背景描写が中途半端なままなので、話が空転するばかりでほとんど進展が無い。まさに作中で主人公自身が自分の人生の進退についてどうしようかと迷っているがゆえに、作品自体も迷走しているのだと思われる。メインキャラが主人公以外で伊藤しかいない事も変化の無さの一因か(もうあと一人くらいストーリーに絡む人物が出てくれば、この膠着状態を打破出来るような気はするが…)。
特にこの巻は全編ほとんど人物が「影」という斬新な表現が用いられているが、見方によっては手抜きとも言える。
それでもまだ今後に期待したい気持ちはあるだけに、何とか盛り返して欲しいところ。