以前レビューした「ホテルとゴルフ場の評価実務のすべてがわかる本」と対極的な内容である。
あの本は既存の鑑定評価のやり方でレジャーアセットを評価した場合の問題点については触れていない。
私が上述の本を読後に抱いた違和感は、
果たして現在の基準で事業の性格を帯びた不動産の評価が出来るのかという疑問であった。
ホテルやゴルフ場についての解説している書物を幾つか見ているが、自己満足的なものばかりで
いずれもこの根本的な論点は触れないものばかりである。この本の第1章を飛ばしているのだ。
それぞれの著者が気づけないレベルなのか、消化出来てなく自分なりの意見を持つに至らないのか不明ではあるが。
不動産鑑定士は鑑定評価基準を唯一の統一的な基準として評価を行う以上、
サブタイトルの「不動産の評価と事業評価の境界線を実務を即して考察する」という視点は重要である。
この論点に焦点を当て、この本はまず今一度不動産鑑定評価と事業評価を丁寧に復習し、
双方の違いを起因とする論点を浮き彫りにした上で現行の「不動産」鑑定評価基準で間に合うのか、
限界はどこか、ではそれをリカバーする為には何が追加で必要か謙虚に問い直した試みが素晴らしい。
この論点を誤魔化す評価書は意味ないし、この論点に気づけない鑑定士は何をやってるのか自覚さえ出来ないエクセル小僧である。
私自身は不動産鑑定士が現在の基準でそのまま事業評価を行うのは理論的には無理があるし、
基準が大雑把過ぎると思われるが、根強い評価依頼があるのも事実であり、このビジネスチャンスを逃す手はない。
であれば、またしても虚業分野をつくらないように、今回の論点を克服したレベルの評価手法を確立しておくのは喫緊の課題である。
私としては第1章をもっと掘り下げた著作を読んでみたい。1章をガッチリ抑えてこそ2章以降の展開に意味を持つ。
ま、さすが村木翁である。