スティーヴィーの80年代第1作目は、「心の詩」〜「シークレット・ライフ」の流れから考えると、かなり異質な作品となった。
ソウルミュージック・シーンにおけるイノベーターという自らのスタンスを、本作においての彼は一旦脇へ追いやり、当時の音楽シーンに対して相当程度目配せしつつ制作された作品、との印象を受ける。
白人系のアダルト・コンテンポラリーに近いアプローチや、ニューウェーヴ調の楽曲アレンジ等が耳に残る作風だ。
あるいは、ボブ・マーレー直系の『MASTER BLASTER』は、この頃THE POLICEなんかの影響で、一気にメジャー・フィールドを席捲し始めていたレゲエ・ブームを、まんま体現したかのようなナンバーであり、数年前に発表した『BOOGIE ON REGGAE WOMAN』のような「スティーヴィー流」とは、明らかに一線を画す内容となっている。
少しうがった表現をさせてもらうなら、コマーシャル路線へと舵を切った作品、と言えるのかもしれない。
各曲のクオリティーについても、70年代の超傑作名作群との比較においては、やや劣っていると言わざるを得ず、全体として残る印象としては、地味で平凡といった感は否めない。
ただ、こうしたイメージというのは、あくまでも究極にハイレベルであったこれまでのスティーヴィーの作品を基準としての感慨であり、当然のことながら、世間一般の水準で考えれば、十分過ぎるくらいの高品質は維持されていると思う。
彼のポップサイドを堪能出来る、好作品であることに間違いはない。
70年代のような、圧倒的な、もっと言えば神がかり的な完成度はないが、これはこれで十分楽しめる内容と思う。