著者は小学校の先生。
徳島県は美郷村という山里の中枝小学校で宿直をしているとき、子ども達から「ホタル狩り」の誘いを受けたのがそもそもの始まりでした。川面に乱舞するゲンジホタルの大群に魅せられ、子ども達とともに観察を始め、人工飼育に挑戦し、3年がかりで卵から成虫になるまでを見届けた活動の記録です。
学校の先生らしくわかりやすい文章で、小学生高学年から読めそうです。
ホタルについてほとんど知識がなかった私ですが、この本の中の小学生達に教わっているような錯覚を受けました。
・成虫だけではなく卵も幼虫もさなぎも光ることを初めて知りました。
・カワニナという巻き貝しか食べない幼虫、水しか飲まなくて生殖活動を終えると3週間の命を終える成虫(「ホタル来い」の歌に習って砂糖水を与えたら死んでしまった!)。
・キレイな清流に住むホタル・・・鉱山の廃液が流れる川には一匹もいない事実。
本で調べてお終いではなく、実際に飼育して卵から成虫になる過程を詳細に観察し、試行錯誤の中で知識を確認していく熱意と集中力に脱帽しました。その生き生きとしたまなざしを記録に残したいと先生も思ったのでしょう。
初版の年代から計算すると、ホタル研究部の部員は私より少し先輩達。私の田舎にはすでにホタルはいませんでしたが、春夏のザリガニ釣り、小川にはメダカが泳ぎ、秋には赤とんぼの大群が空を埋め尽くす自然が残っていました。
現在の子ども達は「人為的に造られた遊び空間」しか与えられず、未知の自然に踏み入って行くときのドキドキ感が経験できなくてかわいそうですね。
一時、ホタルの研究で盛り上がった村も時代の流れの中で過疎を免れず、中枝小学校は廃校へ。図らずも、貴重な記録となりました。