第一部”恋愛の夢”
舞台は1966年の台湾。青年はビリヤード場で働く娘に恋をする。軍隊の休暇中に会いにくるが、娘はすでに他の土地へ。彼女の足跡をたどり青年はバスに乗る。
昭和時代の日本を思わせるような懐かしさを感じる台湾。恋の始まる期待と不安の入り交じった、まだちょっとぎこちない二人の表情。雨の中、一本の傘の中で初めて手をつなぐふたり。自分自身もン十年時が戻ったように、胸がキュンキュンした。
「煙が目にしみる」「Rain and Tears」など音楽も秀逸。
第二部”自由の夢”
時代は遡り1911年、台北の遊郭の女と革命家の青年。ふたりの間には、ただの芸妓とお客の関係を超えた深い信頼があるようだ。
すべて屋内の撮影である事、サイレント形式である事がこの時代の風俗をより鮮やかに伝えている。青年役チャン・チェンの剃髪姿?(前半分の髪を剃り、長くのばした後ろ半分を三つ編みに)がものすごく似合っている。
結局青年は芸妓を妾に迎える事なく、革命に身を投じていく。青年からの手紙を読み、女は目に浮かべた涙を拭う。スー・チーのなんと美しいこと!凛とした高貴なたたずまいが印象的!
ここでも音楽が重要な役割を果たし、現代的なピアノ曲と芸妓が中国の弦楽器を奏でながら歌う歌が秘められた思いを伝える。
第三部”青春の夢”
2005年台北。いきなり男と女がタンデムで現代の台北のハイウェイをバイクで疾走するシーンから始まる。歌手のジンは同性の恋人が、カメラマンのチェンもやはり恋人がいるがどちらもあまりうまくいっていない。そんな中ふたりは出会い激しく惹かれ合う。
恋をしているのに幸せでない。生きて行くこと自体が苦しそう。得体の知れない不安感を漂わせた若者たちの、陰鬱で無表情な感じが、現代を象徴しているように思う。東京にもこんな子たちがたくさんいる。なんだか痛々しくて見ていられない。
映像も一部、二部から比べると色がない感じ。いきなり三部で現実に戻され衝撃を受ける。
主人公は三つの時代とも同じ俳優が演じているが、とくにスーチーが見事に三人の女を演じ分けていて素晴らしい。
『百年恋歌』の原題は《最好的時光》、"もっとも素晴らしい時"という意味合い。たしかに一部、二部は「人生最良のとき!」という感じ。
三部はそうではないと感じるのだが、このパートがあるから前の二つが鮮やかに輝いている。ホウ・シャオシエンという監督をこの映画で初めて知ったが、監督が一番描きたかったのは実はこの第三部なのではと感じた。
この映画をきっかけに台湾映画を見るようになった。思い出深く、そして大好きな映画である。