ペンローズの著作「皇帝の新しい心」「心の影」の要点をざっと眺めて、これらのオリジナル著作を読む時間を投資すべきかどうかの判断を助ける一冊です。(内容の賛否はおいておいて、上の意味で星4つ)
そうか、ゲーデルの不完全性定理(=チューリング機械の停止問題)と、「意識の計算不可能性」の前提から、古典力学(=計算可能)を超えた存在である量子力学(波動関数の波束の収縮)が意識を説明するはずだ、ということがペンローズの主張なわけね、と把握出来ます。個人的には、ペンローズのゲーデル流論法は面白いと思いましたが、意識の計算不可能性を説明するには古典論でなく量子論でないといけない、という論法には如何しても飛躍がありすぎると思えました(注)。また、彼の主張は客観的実験で検証可能な新予測を含まないことは明白であり、それは物理とは言えないでしょう。そういうわけで「皇帝の新しい心」「心の影」は急いで読まなくても良いな、と判断出来ました(感謝!)。また、今よりも若い竹内氏と茂木氏の文章は面白く読めました。(内容がペンローズ寄りすぎで「それはどうかなぁ?」と思う処や、物理的議論が舌足らずな処も少々ありましたが(CPT対称性を語らずして、T非対称性を述べられても...))
(注)自らの科学知識の"バランス"を保つためにも、複雑系の本(カウフマンなど)や複雑ネットワークの本(バラバシなど)も読むべきだと思います。他にラフリン著「物理学の未来」やストロガッツ著「SYNC」もお薦めします。これらの本を読むと、意識の問題は多体的相互作用(→創発)の観点からのアプローチも可能では、と思えるようになります。("More is different"(P.W. Anderson, Science 177 (1972) 393-396)なのです) 数学者としてのペンローズは「物理学は階層的である」ということを良しとしないから、自ら進んで袋小路に入り込んじゃったのかなぁ。