三島由紀夫死後多く人が彼を題材にしたものを出版してきた。これもその一環だ。正直なところ、あまりパッとしない。ノンフィクション作家の視点ということで、祖父の疑獄事件に焦点を当てる部分は読めた。しかし、やはりノンフィクション作家が文芸を語ると陥る悪いパターンにはまっている。徹して三島の作品に対して評価をしなければいいものの、やっぱりそれをしてしまったかという気がする。作品と三島を事実と見てノンフィクションを描けばいいものの、三島作品にところどころ「ここがこの作品の重要なとこ」だとかいろいろ蘊蓄をたれられても困る。その意味で私はこの作品をあまり評価出来ない。猪瀬氏(作者)は後に川端や太宰を題材にした作品を発表していくが、その第一作として見る方がいいだろう!。少なくとも独立した「三島評伝」として読むよりは、連作の一つとして読むべきだ。猪瀬氏のファン、三島をかじりたい、三島熱烈ファンで三島関連は全部読みたい、の三種の読むだろう人がいるが、どの人にとっても不満足で、唯一三島熱烈ファンは「読んだ」という制覇に満足するだろう。私は上の三つのどれにも当てはまらず、困った。