アルモドバル監督の原点であり、「バッド・エデュケーション」(が、今回のDVD化の理由なのだろうが)にも繋がる道である。何はともあれ、祝DVD化!と喜ぶしかないではないか(申し訳ありませんが、このレビューでは「欲望の法則」についてのみ触れさせてもらいます)。
完璧な映画ではない。
性転換して女になった兄/姉とその弟の映画監督(主人公)とその恋人の若者と映画監督が手を出した勘違いした熱い青年の物語。それはトライアングルというよりほとんど知恵の輪化したほどの複雑さだが、いちばん多くのモノを賭けた者が結局は勝者であるという物語なのか、そうではなくて負けているのか、そのすべては気のせいなのか、とにかく欲望であり妄想なのだから、理不尽で頑固で許しがたく不道徳であることに必然性などないのである。
思えば、20年近く前に初めてこの映画を見たときの衝撃は、かなりのものがあった。一見扇情的な映像だけでなく、この物語が語られる理由を考えれば余計にそうなのだが、どのように見ようと私などには消化不可能な物語であると言えると同時に、ずっと心の中にも残っていたのである(しかし、心に残っていたのはどれもこれも美しい絵ばかりであった、監督の欲望を体現したかのようなアントニオ・バンデラスの熱い眼差しはヒリヒリと痛いほどだ)。止められずに溢れ出た監督の思いを考えれば、とことんまで詰め込まれた物語の整合性を問い正したり道徳的な問題をとやかく言うのは、あまりに小さいことだ。
「バッド・エデュケーション」はこの映画に比べれば、はるかに落ち着いて成熟した口調で語られ、スマートなものになっている。ぜひ、2本重ねて合わせて見てもらいたい。