作品130後半になるに従い、老境の弦の名人4名の至芸のアンサンブルが格段の味を醸し出す演奏。一楽章始めでは第一ヴァイオリンがやや堅い音程ですが、展開部あたりから絶妙の織りなすがことくアンサンブルがかみ合って来はっとる。やや速めのヴィルトゥオーゾ的第二楽章では音色はすっかり柔らかく、耳になじむ音が実に心地ええ。呼吸をゆったり大きく取った第三楽章第一主題のポルカ風の演奏は、チェコ音楽ファンだけでなく、あらゆるクラシックファンを魅了するやろうな。
谷間に咲いた一輪の花のような第四楽章。いつ聴いても心が解きほぐされ、昇華されていく。このスメタナ盤で聴くと、こんなに分かりやすい名曲はあらへん、と思います。両ヴァイオリンが花ならば、中低域部はそれを支える野山の蝶々のよう。そして圧巻第五楽章。ベートーヴェンが作曲しながら涙した、青春を振り返るような心情の吐露ならば、この老境のチェコの名人軍団も己の演奏人生を振り返り、プロの瞼の奥に秘めた感慨の涙を感じさせるし、凡人のわての目にもいつも涙がにじみます。わては一寸ポルカ風のシンプルな新第五楽章で聴いとりますが、別作品として作品133大フーガも、第三フーガのやや静かなテンポから拡がってゆく感じが好きですなあ。
現行のデジタル録音分売では、第一主題、再現部、コーダ等のインデックスがついて居り、ともすれば難解と思われやすいベートーヴェンの弦楽四重奏曲の構造を理解する助けになります。ライナー解説も充実。このデジタル録音の全集が世に出た1980年代には、楽章内インデックスはなかったので、廉価盤のうえこうした付加価値をつけるレコード会社はファンのことを分かってらっしゃる、と思います