第13番と番号が振られているが、これは出版した順序になっており、作曲されたのは第15番の後で、1825年(55歳)に完成された。当初ベートーヴェンは終楽章として、のちに「大フーガ」と呼ばれる長大な第6楽章を作曲したが、評判はあまりよくなかった。初演の時にも他の2楽章がアンコールされたが大フーガはアンコールされなかったっそうだ。ベートーヴェンはこれにいたく立腹して周囲に当たり散らしたらしいが、出版社からも技術的に困難で難解だとして新しい終楽章を書くようせがまれて新たに書き直した。
確かに大フーガは凄い終楽章だ。緊張感の高まりは尋常ではなく、ベートーヴェンが到達した音楽の極致と言ってもいいと思う。が、聴衆の理解は得られなかったようで、なんと長い間失敗作とみなされていた。私もこれがベートーヴェンの傑作として紹介されているので最初からそういう耳で聴いているからそこ、これが名曲だと受け入れられるのかもしれない。当時の弦楽四重奏曲の常識に照らしてみると、こんな破格な曲を聴かされたら困惑するのは当然だろう。そして専門の音楽家も失敗作と思っていたということは、そういう人であってもこの内容を理解するのは難しかったということだ。
終楽章だけでなく、第13番は全曲素晴らしい霊感に満ちている。ラズモフスキー以後、12番までの諦念のようなものから一歩抜け出して、音楽の喜びが溢れているような気がする。決して言われているような晦渋な所はない。単純で素直な楽想が当たり前のように、これしかないという形で進んでいくのだが、そこに奥深さが表現されているのだ。特に第4楽章カヴァティーナの美しさはどうだ。この楽章など誰もが聴いた瞬間に魅了されるに違いない。
アルバン・ベルク弦楽四重奏はどんな些細な部分も揺るがせず、すべて陽の光の下に晒してしまうような演奏だ。それは明快で、クッキリしていて、緊張感の高い演奏なのだが、第4楽章くらいもっと軽く、肩の力を抜いて演奏してもいいのでは?と思ってしまう。そんな言い方は、ないものねだりということは分かっているんだけど。