1979年9月、ウィーンでのライヴ・レコーディングです。レナード・バーンスタインは61歳、円熟味もあり、持前のエネルギッシュな個性が花開いた第9の名演奏がこの廉価とは信じられません。
第1楽章の冒頭の緊張感と深刻な音楽であるにも関わらず大きく堂々とした展開、バーンスタインの陽気さとカリスマ性をいきなり感じる導入部分でした。
第2楽章のクレッシェンドの過程の躍動感と高揚感、精緻なアンサンブル、ウィーンフィルの巧さが光ります。
第3楽章は、各パートの奏者がどれだけ歌い上げるかで、退屈な音楽となるか、天上から降り注ぐ至高の音楽となるのか、評価が分かれる楽章です。バーンスタインのテンポ設定はより遅く、物凄い緊張感が伝わりますが、それを昇華した音楽の美しさはまた格別なものでした。
第4楽章の合唱部分は、気をてらうことのない王道の演奏でした。バスのクルト・モルは堂々とした歌いっぷりでしたし、テノールのルネ・コロは定評どおりの美声です。ソプラノのギネス・ジョーンズ、アルトのハンナ・シュヴァルツと役者は揃っています。そして、ウィーン国立歌劇場合唱団の輝かしいばかりの量感溢れる合唱。
ライヴですので、男声合唱が歌い終わる前にオケが入り重なるという個所は「新趣向」として捉えましたが、それ以上にバーンスタインの意気込みとそれに応えるオケと合唱。この渾然一体となった躍動感から至福の演奏が生まれています。
第9の理想の境地に達しています。圧倒的な量感と感動を持って押し寄せるフィナーレの凄まじさ。破たん寸前でありながら、その崖っぷちで踏みとどまっており、この恍惚感はあのバイロイトのフルトヴェングラーと匹敵する、いやそれを超える演奏で、比類なき名演奏として評価できます。