交響曲第5番は、並々ならぬ緊張感をもって演奏される。全体としては、速いテンポで一気呵成に突き進み、まったく隙のない演奏という印象。第1楽章は尋常ではないほどの気迫のこもった序奏に始まり、重厚な弦楽器の音の大洪水に飲み込まれそうだ。非常に険しく、厳しい演奏で、息をつく暇もないという感じで、真剣に聴いていると息苦しささえ感じる。第2楽章は多少緩やかになるが、やはり、音楽全体の緊張感は衰えない。第3楽章は極度に張りつめた音楽に戻り、まるで人生における苦悩、受難の連続であるかのように響いてくる。そういう、苦悩や受難を乗り越えてたどり着く第4楽章は長調に転調しているため、苦難の先に希望があるかのようなメッセージに聞こえないこともない。だが、その希望は軽薄な楽観主義を戒めるかのような厳しさをあわせもっていることを暗示しているかのようだ。晩年になって、カラヤンとベルリン・フィルとの間には不和が絶えなかったそうだが、この演奏に関しては、指揮者とオケの間にはそういう不信感は微塵も感じられない。別の、同コンビによる版のCDのレヴューでも書きましたが、筆者はカラヤンの演奏が好きではありませんが、この交響曲第5番は間違いなく「名演奏」です。老いてなお衰えることのないカラヤンの指揮者としての活力には脱帽である。
交響曲第6番に関しては、やはり好みが合いません。もっと、ゆったりとした雰囲気のカール・ベーム指揮ウィーン・フィル版の方が「田園」風景を見事に描写しているようで、こちらの方がお勧めです。交響曲第5番のみを評価すれば★★★★★(5つ星)です。