素晴らしいイタ起こしである。
交響曲5番について書くと、1947年5月27日戦犯裁判勝利直後のライブ録音と共に、あるいはそれ以上に評価の高い戦時下の演奏である。たたきつけるような灼熱のベートーベン5番とでも言おうか。
木造のベルリンフィルを反映してか、テンポはゆっくり開始され、また、ライブ独特の揺れは少ない。緊張感漂う楽器群は鳴りきっている事が、貧弱な音からも伝わってくる。非常にオーソドックスで評論家からも一矢もできないもの。
1947年盤に比べると解釈に差が見られ、例のリズムテーマをくっきりと浮き上がらせ切れてはいないのが惜しまれる。例えば、3楽章の終末など。
4楽章の最後の加速に入って、驚かない人はいない。よほどリハースを入念にしたものであろう、オケも最後のスピードに難なくついて行って狂ったように終結に向かう。
4番については、ライブであり、スタジオ録音と共に評価の高いものの一つである。以上を 50年60年代 LP から復刻したこだわりのプロダクションである。
これら、大戦時のフルトベングラー録音テープはじめ録音器機、コンセントに至るまで、ソ連軍がベルリンに侵攻した時に持ち帰ってしまった。テープは彼の地で LP 発売、それからマスター起こししたものが西側でLP発売されて存在が知られていたものである。ゴルバチョフ氏時代にグラスノスチ(情報公開)政策によって先ずデジタルコピーなどから返還・公開、徐々に良質の CD プロデュースにいたり、ファンを納得させるに至った、曰く付きの数奇な音源といわねばならない。
日本のファンは幸せである。CDはほとんどそろい、日本フルトベングラー協会は、最大のメンバーを誇る。彼の著書も、「音と言葉」「音楽ノート」「フルトベングラーの手記」がそろう。ディスコグラフィーも翻訳、最新版が分かる。アメリカでは、全く名前も聞かれない。
音響技術の粋を集めたベルリンフィルハーモニーは焼け落ちた。しかし、世紀の巨匠の芸術は永遠に記録に留められた。
参考:
ベートーヴェン:交響曲第4番/第5番《運命》こちらも LP からの復刻。原盤に、'50年代末の 極めて希少なソ連製を選んであるのは、耳を持っている熱心な職人のこだわりの証拠であろう。
フルトヴェングラー 音と言葉音と言葉 (新潮文庫)