映像は音楽の印象にどれほどの影響を与えるのだろうか。そのあたりのところはわからないが、
このDVDは、映像と音楽が一体となって、視聴者に迫ってくると言う感じだ。場面の切り替わり
が速く、6番の「嵐」のところなど、ちょっと「なくもがな」の、急激ズームアップがあったり
して、「ああ、やっちまってる」という感じだ。言うまでもなく、ベートーヴェンに限らず、
音楽は多様な解釈を許容するものだが、ベーレンライター版は、従来のブライトコプフ版より
明らかに良いと思われる部分も少なくない。そのあたりのところを楽譜で確認したわけではない
けれど。バーレンライター版で、このヤルヴィや、少し前のノリントンなどは、かなり急速な
テンポで、アタックが強く、かなり刺激的な演奏だが、古楽器ではブリュッヘンなどが、これに
近い印象を与えるし、カラヤンなんてのは、ブライトコプフ版を使いながら急速のテンポで、
あれはあれでかなり現代的でしょう。
この演奏の利点は、室内オケを使っていて、アンサンブルが見事に決まっていてるという
ことである。ベートーヴェンの交響曲の演奏には、ある種の「歌」というか「余裕」を求めたい
のも確かだが、1番、2番、4番、5番、8番などは、こういう燃焼系の演奏がわりと嵌る。
一方、6番や9番などは、やはりもう少しオケにボリュームとスケールがあって、ロマン性が
強調されたほうが、祝祭的な雰囲気が増して良いとも思える。しかし、こういうベートーヴェン
を聴いてしまうと、従来の版でやるにしても、余程凄い演奏じゃないと、もうやる意味がない
ような気さえしてくる。例えば、今から、ムーティやメータあたりが旧来の楽譜を使った演奏
をやるとして、聴く気になるかどうか疑わしい。