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戦時中1941年9月にハリウッドRCAスタジオで収録された歴史的名録音。当時「百万ドルトリオ」と称された3人の巨匠のうち、とりわけピアノのルービンシュタインとヴァイオリンのハイフェッツは、当時の音楽界の頂点に君臨する2人であったが、芸風の違いから反目は明らかであり、波乱含みのレコーディングとなった。録音は実に鮮やかで、第2次世界大戦中のものとは思えないほどの生々しい響きが素晴らしい。なお、翌年にチェロのフォイヤマンは急死している。
ニューヨークの音楽学者ハリー・ゴールドスミス、そして故・三浦淳史氏によるライナーノーツは録音現場の事情を詳しく描写していて興味深い。それによると、ハイフェッツはルービンシュタインが上っ面でロマンティックに過ぎると文句を言い、ルービンシュタインはハイフェッツの弾き方が冷たく攻撃的で前に出過ぎると言う。ルービンシュタインがベートーヴェンの終楽章の軽快な部分でポーランド風の茶目っ気を加えると、ふざけるなという目つきでハイフェッツが演奏を止めて真っ向からにらみつけるという険悪な一幕もあったという。
ベートーヴェン「大公」第1楽章の展開部、ピアノのトリルの連続に合わせてヴァイオリンとチェロがピチカートで音階を上下させていくところなど、そこに漂う緊張感たるや壮絶なものがある。シューベルトの終楽章も、どんな弱音、単純なフレーズにも油断は禁物で、一見可愛らしく快活な音楽の陰に潜んだ、三者三様のカミソリのような技の切れ味がすごみを放っている。
戦前の巨匠時代のトリオといえば、カザルス、ティボー、コルトーの3人によるトリオが有名だが、そちらはカザルスを中心に比較的円満なアンサンブルがまとまっていたのに比べると、こちらはさながら殺気に満ちた真剣勝負。極意をきわめた達人3人が、表向きは絶妙のバランス、内実は危険で不思議な均衡を保っている。まるで命がけの果し合いを見ているような、二度とありえない奇跡の三重奏と言うべきだろう。(林田直樹)
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36 人中、31人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
文学の薫り高き音楽,
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レビュー対象商品: ベートーヴェン : ピアノ三重奏曲第7番 「大公」&シューベルト : ピアノ三重奏曲第1番 (CD)
村上春樹の最新刊『海辺のカフカ』に出てくるのがこの演奏。もちろん現在のデジタル録音とは音質は比較にならないものの、音の古さは全く気にならない。当時の超一流のソリスト3人が、丁々発止とこれでもかとぶつかりあって出来上がる音楽は、大変な気迫がみなぎっている。特にチェロのフォイアマンは若くして亡くなったため、全盛期の技巧を窺い知ることの出来る貴重な演奏。ライナーノートに書かれた録音当時のエピソードも興味深い。
28 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
私も「海辺のカフカ」でこれを・・・。,
By カスタマー
レビュー対象商品: ベートーヴェン : ピアノ三重奏曲第7番 「大公」&シューベルト : ピアノ三重奏曲第1番 (CD)
実はこれを注文して買ったはいいけれど、届くのが待ちきれなくって図書館で演奏者の異なる大公を借りたのです。「なかなかですな」と思いきや、届いた「百万ドル・トリオ」を聴くと、借りたものの演奏とは全くの別物!!こんなにも違った曲になってしまうものなんだ・・と感心、感動!特にAndante cantabile・・ の切なさといったら!!必聴ですぞッッ!!ただし、録音が1941年。あまり期待し過ぎると周りの雑音、音質にがっかりしてしまうかもしれませんのでご注意を。
26 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
海辺のカフカの中に登場するのはこれ?,
By カスタマー
レビュー対象商品: ベートーヴェン : ピアノ三重奏曲第7番 「大公」&シューベルト : ピアノ三重奏曲第1番 (CD)
村上春樹の『海辺のカフカ』の中に、大公トリオが登場します。どんなものなのか気になったので聞いてみたのですが、ベートーベンなんて聞いた事もない私だったけど、今ではクラシックばかり聞いています。ただ、作品自体が古い録音で音的にはどうかと思います。それはそれで味があるといえばあるのだけれど。
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