ハイドンの後期ソナタも、ブラームスもいいが、このCD(2枚目)におさめられている
ベートーベン・ピアノソナタの「16」「17」「18」(というよりも作品31-1、2、3)はとてもいい。
「16」の出だし、彼独特の玉が転がっていくようなタッチと、音質、速度感が見事だし、気持ちがいい。
「17」はテンペストとして有名な楽曲だが、多くのテンペスト演奏の中でも、彼のこの演奏はもっとも聴きやすく、
何度でも聴ける、優れたものだ。
ベートーベンのピアノソナタ弾きとしては、グルダがベストだと思っているが、
グールドのこれも、違った意味で最上のもののひとつ。
長調、短調、長調という曲の流れも、明るく始まり、テンペストを味わって、朗らかな「17」で終わるので、
心地よく聴いていける。たぶんグールドもこのことを意識して、この3つのソナタを分離せずに1枚に入れたのだろう。
(最初のアナログ盤でもそうなっていた。このアナログ盤のジャケットは、嵐の中の帆船がコラージュで表現され、
とても良かった)。3つのソナタの9つの楽章は、どれも味わい深く、現代的で、輝いている。