ベートーヴェンのピアノソナタは、ブレンデルの3度目の録音を愛聴してきました。ブレンデルの場合、非常に楽譜に忠実で、正統派のベートーヴェンを聴かせてくれるところがいいのですが、はっとさせられるような音のきらめきというものがないのも事実だと思います。ブレンデル自身、それはわかっているでしょうし、自分の求めるベートーヴェン像がそこにあるのだと思います。ブレンデルの演奏に慣れていてこのポリーニのベートーヴェンを聴くと、これらのソナタにはまだまだこんな解釈の余地があったのかと、ある意味はっとさせられます。特に「月光」は素晴らしいです。しかし「熱情」は いただけません。いたずらにピアノを鳴らしすぎているというか、ここまで滅茶苦茶に弾かれると原曲がわからなくなります。もっとも、ここに収められている「月光」と「熱情」では、録音された時期が違うので、一概に「ポリーニは・・・」とは言えません。この3大ソナタだけを聴こうと思わずに、録音された年代別に、別々にCDを買って、その年代のポリーニをお聴きになることをお勧めします。ベートーヴェンのピアノソナタは、有名曲以外でも素晴らしいものはたくさんありますので、是非そういう聴き方をして「ポリーニ」を体験していただきたいと思います。