既に多くの人が決定盤の評価を下しているCDに敢えて異論を唱えるつもりもないので、演奏自体については触れないことにして、従来盤と今回のHQCDの音質の相違点だけを述べることにする。私が比較したのは98年のARTリマスター盤で、先ずこれまでのHQCDリニューアル盤に共通している点は、音量自体のボリュームがアップしていることだ。これはおそらく24bitリマスタリングした時の副産物と言えるだろう。ただ音量の違いだけならアンプのボリュームを上げれば、同じように再生されるかというと、幸いにもそうはならなかった。
どちらも69年の収録で、この頃のEMIの音質の弱点は特にベートーヴェンの方に出ているが、このCDではそれがある程度改善されている。以前はオーケストラのパートが3人のソリストに対して若干後退してひと連なりに聞こえていたが、全体的に響きが良くなり、各楽器間の音の独立性もより明瞭になっている。結果的にカラヤンが苦心したスケールの大きなオーケストレーションのバランスのテクニックが際立つことになった。一方ブラームスは同じ年の録音だが、会場による音響の違いからか前者よりオリジナル・マスターの出来が良く、あらはそれほど目立たないが高音、低音共に伸びが良くなっているようだ。ARTリマスター盤では小ぢんまりとまとまり過ぎていたように思える。
尚このCDは既にリイシューになり、2009年に初めてHQCD化された時には2600円だったが、私は翌年の秋に1200円で買った。大幅な低価格化は評価できるが、最初に購入した人にとっては、わずか一年余りで半額以下になると、納得がいかない部分もあるだろう。