ベートーヴェンのチェロとピアノのための作品集には多くの名盤があります。たとえばロストロポーヴィッチとリヒテル、最近ではペレーニとシフもよい演奏でした。それらのなかでも、トップにあげられるのが、フルニエによる演奏です。誰もが言うことですが、フルニエのチェロにはほんとうに品格が感じられます。バッハの無伴奏チェロ組曲もそうですが、作品に対して誠実に向き合い、よけいな自己主張をせずに、作品が語ろうとしていることを十分に語らせる、そういう演奏です。このケンプとの共演盤では、ケンプの堅実な演奏が、そうしたフルニエのチェロをどっしりと受けとめています。ソナタをじっくり聴きこむもよし、変奏曲の愉しさに思わずハミングするもよし。何度聴いても飽きない、座右の一枚(ていうか二枚組)です。
ところで、フルニエにはほかに、グルダとの共演盤もあって、これがまた大名演。こちらのほうは、若いグルダのピアノが、若鮎がぴちぴちはねているような、書かれた楽譜を演奏しているのではなく、今まさに音楽が生まれ出ているような、フレッシュな演奏です。ぜひ、ケンプ盤とともに聴いていただきたいのですが、輸入盤でしか手に入りません。国内盤発売を熱望いたします。