この本を通してベートーヴェンを見つめると、彼が非常に不幸でストイックであり、善を重んじて七転八起する頑強な人物のように感じられます。
確かに読者を感動させ、強い希望を沸かせてくれる作品です。
しかし、書かれた時代が古いこと、ロラン自身に感情に走っている節があること、ロランが出版にあたって訂正を加えなかったことなどから、ベートーヴェンが誠実に描かれているとは言えません。
例えば、ベートーヴェンが実際持っていたユーモアについての記述がないので、とても暗い印象を持ってしまいます。また、恋愛観についても最近の研究とは食い違っています。
よって、この本を読んで得た知識を鵜呑みにしたり、ベートーヴェンに対する印象をそのまま保持するべきではありません。
勿論、ベートーヴェンを知るためではなく、ただ激励されたいのならこの本があれば十分です。
でも、「できる限り真実を忠実に記してほしい」というベートーヴェンの願いを受け入れたいなら、他の本も多数参考にする方がよいと思います。