本書は著者の金聖響さんの次のキャラクターから、深い洞察の上に見事に奏でられた優れたベートーヴェンの交響曲案内であり、9つの交響曲がその当時のベートーヴェンの外的・内的状況やピアノソナタ・弦楽四重奏作品を視野に入れて一曲ずつ解説されていて、それぞれに深みがあります。
1.ベートーヴェンを自分の原点とするほどの強い想いと情熱を持つ
2.実績ある現役の指揮者(演奏家)である
3.ボストン大学哲学科卒で幅広い知識、客観的視点、さらに独自の視点を持つ
4.ベートーヴェンゆかりの地を訪れて得た実感覚や音楽史実を踏まえた上で洞察する
5.大阪人(出身)としてのユーモアを持つ
全体として印象に残ったのは、他の作曲家と違いベートーヴェンの全ての交響曲は一曲一曲の全てが完全に独立していて、第5番の運命は物語性を持つと同時に一音も修正する必要のない完璧な構造を持つ作品という指摘と解説でした。
楽聖ベートーヴェンとその曲に興味を持たれる方はこれ以外にも様々な驚きや発見があると思います。ベートーヴェンは良く知らないと言う方には彼とその作品を知る良いきっかけになるのではないでしょうか。
蛇足ですが、金聖響さんが千住真理子さん出演のヴァイオリン協奏曲を指揮された後に、達成感に満ちた表情でお二人が握手された姿が印象に残っています。これまでクラシックに縁がなかった方もこれを機に聖響さんや千住さんのコンサートに足を運んでみると、何か新しい音楽の発見があるかも知れません。