翻訳が悪いという評価を読んで購入を悩んだが杞憂だった。確かに軽い読み物ではない。しかし、1950年代から半世紀に渡るジャマイカ音楽の歴史についてこれほど詳しく面白く書かれた本は他にないのでは?筆者の多方面な考察の中に、歴史の生き証人とも言える人々のインタビューが織り込まれ、読んでいて独特なリズムがある。また音楽を表層的に眺めるのではなく、社会の動きと共に深く掘り下げていて、ジャマイカの音楽は単純に音楽なのではなく、「カルチャー」なのだという筆者の明確なメッセージを感じる。 加えて注釈が丁寧。特に長めの注釈は筆者とは違った視点で補足がなされ、独立した読み物として一読の価値がある。各章が独立しているため、興味のある年代から読むことも可能。個人的にはボブ・マーリーやルーツ・レゲエの章に今までにない情報や考察が多く特に面白かった。この内容で3000円は安い。訳文は原文に忠実という印象。行きすぎた意訳よりは遥かに信頼できる。